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配信遅延が生まれる仕組みと、OBSの「遅延配信」設定、コラボ時の注意
配信では、自分が画面で見ている瞬間と、視聴者が見ている瞬間に、ずれがあります。このずれが配信遅延です。コメントへの返事がかみ合わない、コラボ相手と話が重なる、といった困りごとの多くは、この遅延が原因です。この記事では、遅延が生まれる仕組みを順に見て、OBSの「遅延配信」設定の意味、コラボ配信での注意をまとめます。遅延の長さは、配信先のサービスや設定で大きく違うため、具体的な秒数は断定せず、確認の方法を中心に説明します。
遅延はどこで生まれるか
映像が視聴者に届くまでには、いくつもの段階があります。それぞれの段階で、少しずつ時間がかかり、合計が、配信遅延になります。
| 段階 | 起きること | 遅延に関わる要素 |
|---|---|---|
| 1. 取り込み | ゲーム画面やカメラの映像を、OBSが受け取る | キャプチャ機器の処理時間、カメラの遅れ |
| 2. エンコード | 映像と音を圧縮する | エンコーダーの設定、パソコンの負荷、キーフレーム間隔 |
| 3. アップロード | 圧縮したデータを、配信先へ送る | 回線の上り速度、接続の安定性、使うプロトコル |
| 4. 配信先での処理 | 受け取った映像を、複数の画質に変換するなど | 配信先の仕組み、低遅延の設定の有無 |
| 5. 配信ネットワーク | 世界中の視聴者へ配るための中継 | サービスのネットワーク構成 |
| 6. 視聴者の再生 | 視聴者のプレイヤーが、途切れないよう少し先読みしてためる | プレイヤーのバッファ、視聴者の回線 |
表の中で、OBSの設定で変えられるのは、主に2と3です。4から6は、配信先と視聴者の側で決まります。つまり、OBSだけで遅延をゼロにすることはできず、配信先の低遅延の仕組みを使えるかどうかにも、左右されます。
特に6のプレイヤーのバッファは、途切れを避けるためのもので、視聴者の回線が不安定なほど、長めにためる傾向があります。同じ配信を見ていても、視聴者ごとに遅延が違うのは、このためです。
低遅延と画質・安定性のトレードオフ
遅延を短くする設定は、多くの場合、途切れにくさや画質と引き換えです。バッファを短くすると、回線が一瞬乱れただけで、映像が止まりやすくなります。配信先に低遅延のモードがあるサービスでは、そのモードにすると、遅延が短くなる代わりに、画質の面で制約が出ることがあります。
どちらを優先するかは、配信の内容で決まります。視聴者のコメントにすぐ反応する、クイズや対戦の企画では、遅延が短いほうが向きます。画質を重視する、作業の記録や、ゲームの紹介のような配信では、遅延が少し長くても、安定したほうが望ましい場合があります。
配信先の低遅延の選択肢の名前、有無、遅延の目安は、サービスごとに異なり、更新されることもあります。ここには数字を書かないので、必ず配信先の公式の案内で確認してください。
OBSの「遅延配信」設定
OBSには、わざと配信を遅らせる機能があります。「設定」の「詳細設定」にある「遅延配信」です。遅延を短くする機能ではなく、反対に、遅延を意図的に増やす機能です。
- OBSの「設定」を開く
- 左の一覧から「詳細設定」を選ぶ
- 下のほうにある「遅延配信」の欄を探す
- 「有効にする」にチェックを入れる
- 「期間」に、遅らせたい秒数を入れる
- 「適用」を押す
この欄には、ほかに、「再接続時にカットオフポイントを保持する (増加遅延)」という項目があります。有効にすると、一度回線が切れて、つなぎ直したときに、遅延分のデータを保ったままにします。そのかわり、切れていた時間の分、遅延が増える場合があります。また、設定した秒数に応じて、メモリの使用量の目安が画面に表示されます。長い遅延にするほど、メモリを多く使います。
この機能の主な使い道は、次のとおりです。
- 対戦ゲームで、視聴者が、あなたの画面の情報を相手に伝える行為(いわゆる情報の流れ)を避けたい
- 見せたくない画面が一瞬映った場合に、配信先に届く前に、止める時間を作りたい
- 大会などの運営で、ルール上、一定の遅れが求められている
ただし、遅延を入れると、視聴者とのやり取りも、その分遅れます。コメントに答える際、視聴者が見ている場面は、あなたの画面より、設定した秒数だけ前です。そのため、遅延を入れる配信では、「いまの場面」ではなく、「さっきの場面」にコメントが付く前提で、進行を考える必要があります。
遅延が入るのは配信だけで、録画には影響しません。録画のファイルは、遅れのない映像が保存されます。録画の形式については、obs-recording-formatの記事で説明しています。
遅延を入れたときの動きの注意
遅延配信を入れると、配信を止めるときの動きにも注意が必要です。「配信終了」を押しても、遅延分のデータがまだ配信先へ送られていないため、OBSは、残りを送り終えるまで、すぐには止まらない場合があります。ボタンを押して、すぐに終了したように見えても、視聴者側では、しばらく配信が続いています。
特に、配信を終えるときに、見せたくない内容を映してしまうと、視聴者側では、あとから見えてしまうことがあります。配信を終える前に、画面を安全な待機画面に切り替えて、遅延の秒数が過ぎるのを待ってから、止める習慣が安全です。遅延を入れている間に、ホットキーで操作する場合も、同じ考え方になります。
遅延の効き目は、配信先ごとに受け取る側の遅れが重なります。たとえば、OBSで30秒の遅延を入れると、配信先での処理と視聴者のバッファが、さらに加わります。その合計が実際の遅れになるので、設定した秒数ぴったりの遅れになるとは限りません。実際の遅れは、次の方法で測れます。
- 別の端末(スマートフォンなど)で、自分の配信を再生する
- OBSで、画面に現在時刻が出るようにする(時計のソースなど)
- 端末の画面に映る時計と、パソコンの時計を見比べる
- 差を、遅延の目安として記録する
同じ端末でアプリが違えば、遅延も違う場合があります。測るときは、視聴者が使う方法に近い環境で測ってください。また、自分の配信を同じパソコンで見ていると、音が二重になってこだまするため、音量を消すか、ヘッドホンを使います。
コラボ配信での注意
他の配信者と通話しながら配信する、コラボ配信では、遅延の問題が目立ちます。主な原因は、次の2つです。
| 問題 | 起きること | 対処の考え方 |
|---|---|---|
| 通話の遅れと、配信の遅れが別物 | 通話の相手は、ほぼリアルタイムで話しているのに、視聴者は、配信の遅延分だけ遅れて見る | 視聴者のコメントを、話題にするときは、少し待つ。コメントに頼らず、台本や段取りで進める |
| 相手の配信と、自分の配信の遅れが違う | お互いの配信を見ながら話すと、場面の見え方が、ずれる | 相手の配信を見て反応するのは避け、通話の音を基準にする |
| 通話音声の取り込み | 通話アプリの声を、自分の配信に載せたとき、声が二重になる、または抜ける | 通話アプリの出力を、OBSの音声ソースとして、1回だけ取り込む。モニタリングの設定を見直す |
| 画面共有を使うとき | 通話アプリの画面共有は、配信より遅れて見えることがある | 本番の前に、ゲームの進行と共有画面の遅れを測る |
コラボ中は、相手の配信画面を見て、「いまの場面」に反応したくなります。しかし、相手の画面は、相手の配信の遅延を含んで見えています。通話での反応と、画面の場面とが、微妙にずれることがあります。可能なら、相手には、配信の画面ではなく、ゲーム本体の画面を直接見てもらうようにします。
コラボ相手と、同じゲームの対戦をする場合は、遅延が公平性に関わることがあります。片方だけが遅延を入れていると、視聴者が見る画面が、相手の状況を先に教えてしまうなど、不公平が出る場合があります。事前に、お互いの配信の遅延の設定を、共有しておくと安心です。
OBS上のツールと遅延の関係
このサイトのツールのように、ブラウザソースで画面に載せる表示は、映像の一部として一緒に配信されます。そのため、ツールの表示も、映像と同じ分だけ遅れて、視聴者に届きます。カウンターやタイマーの数字も、視聴者の画面では、映像と同じ速さで、遅れて動きます。数字だけが先に出る、遅れて出る、ということはありません。
ただし、視聴者が何かを操作して、ツールを動かす仕組みを使う場合は、別です。たとえば、コメントや、投票の結果を取り込んで表示する仕組みでは、視聴者の操作がツールに届いてから、画面に反映され、そのあと配信の遅延を経て、視聴者に戻ります。視聴者から見ると、自分の操作の結果が、少し遅れて返ってくることになります。このような企画では、結果が出るまでに数十秒かかる前提で、案内を出すと、混乱が減ります。
ツールが保存している値は、配信の遅延とは関係なく、パソコン側で更新されます。保存値の扱いについては、obs-saved-valuesの記事に書いています。
確認の流れと、よくある失敗
| 起きること | 考えられる原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 遅延が思ったより長い | OBSの遅延設定が有効のまま | 「詳細設定」の「遅延配信」を確認する |
| 配信を止めたのに、視聴者側でまだ続いている | 遅延の分のデータを、送信している | 止める前に待機画面にして、秒数が過ぎるのを待つ |
| 遅延を短くしたいのに、OBSの設定が変えられない | 遅延の長さの多くは、配信先で決まる | 配信先に、低遅延のモードがないか確認する |
| コラボで声が二重になる | 通話の音声を、複数の経路で取り込んでいる | 音声ソースを整理し、1経路にする |
| 回線が切れたあと、遅延が増えた | 再接続時にカットオフポイントを保持する設定が有効 | 用途に合わないなら、オフにする |
遅延の設定を変えたら、短い配信か限定公開の配信で、実際の遅れを測ってから、本番に臨むのが安全です。回線の状態やパソコンの負荷は、日によって変わるため、測った値も、目安として扱います。
配信の安定性と画質の設定は、obs-bitrate-resolutionの記事にまとめています。遅延と画質は、同時に調整すると原因が分からなくなるため、片方ずつ変えて確かめてください。
遅延がある配信では、視聴者とのやり取りに、少しの工夫が役立ちます。たとえば、質問を受けたときに、「いまのコメントは、数秒前の場面についてのものかもしれません」という前提で答える。クイズや投票の企画では、受付の締め切りを、遅延の分だけ余裕を持って設定する。いつ見ても分かるように、画面の隅に、時刻や進行の表示を出す、などの方法があります。
視聴者のなかには、遅延を短くするために、プレイヤー側の設定を変える人もいます。ただし、その設定の有無や、効果の大きさは、配信先とプレイヤーの種類によります。配信者の側から、視聴者に細かな設定を求める必要はありません。配信先の案内に、視聴者向けの低遅延の説明があれば、それを紹介する程度で足ります。
録画を後から公開する場合は、配信中の遅延は関係しません。録画のファイルには、遅れのない映像が残るため、アーカイブとして公開する際は、コメントの時刻と、映像の時刻がずれていないかを、確認しておくと安心です。
最後に、もう一度、整理します。遅延は、取り込み、エンコード、アップロード、配信先の処理、配信ネットワーク、視聴者の再生という段階の合計です。OBSで変えられるのは、一部だけです。「遅延配信」は、遅延を意図的に増やす機能で、使うと、停止の動きとコメントの時差に影響が出ます。コラボでは、通話と配信の遅れが別物であることを前提に、段取りを組みます。実際の遅れは、別の端末で測って確かめてください。
遅延の確認を習慣にするための、簡単な流れも書いておきます。配信の前に、限定公開などの確認用の配信を数分行い、別の端末で再生して、時計の差を測ります。次に、コメントを自分で書き込み、画面に反映される時間と、返事をしたときに視聴者側に届くまでの時間を、体感で確かめます。そのうえで、企画の進行に必要な「待ち時間」を、メモしておきます。毎回測る必要はありませんが、配信先や回線、設定を変えたときには、測り直してください。
パソコンの負荷が高いと、エンコードが追いつかず、遅延が少しずつ伸びていくことがあります。ステータスバーのCPU使用率やドロップフレームが増えていないか、配信中に時々見ます。伸びた遅延は、負荷を下げると、戻る場合があります。